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さんえすクラブ リレーエッセイ【第7回】 英君酒造(株) 望月

英君酒造(株)仕込み水

(株)オリマツの瀬山さんからバトンをお受けいたしました。
清酒や料理酒、酒粕などでお世話になっております、静岡の英君酒造(株)の望月です。

弊社は明治14年(1881年)に静岡は由比という町で日本酒を造り始め、私で五代目となります。造り酒屋という業種は、元々地方の大地主が自分の土地で作らせた米の余りでお酒を造り始めたのが始まりと言われていますが、英君は実は分家で自前の田圃は全くありませんでした。それ故、創業当時から各地の優秀なお米を探してお酒を仕込んでいたと聞き及んでいます。

さて、お酒を仕込むうえで大切な事は原料米、酵母、技術、温度管理など色々ありますが、今回は仕込み水に絞って書いてみたいと思います。

英君酒造(株)仕込み水の鉄分除去

皆さんはお酒の仕込み水ってどんなイメージをお持ちですか?もちろん水道水ではないという事はお分かりだろうと思いますが、井戸水であったり、伏流水であったり、湧水であったりすることが多いです。

昔からよいお酒を醸す銘醸地には必ず良い水があり、有名な所では灘(兵庫県)の宮水などがあります。静岡は温暖で、米の産地ではないため銘醸地というイメージはありませんが、南アルプスや富士山などから流れ出る水質は非常に素晴らしいです。
英君でも二代目が蔵から3kmほど北方にある山から清冽な水が湧き出ていることに目をつけ、山ごと購入したという話を聞いております。今では、近隣の家数十軒と簡易水道組合を結成し、皆で水源地を含む水道の保全管理を行いながら水を使用しています。

さて、こうして蔵まで引き込まれた水ですが、そのまま使用されているわけではありません。お酒を仕込む上で一番邪魔になるのは水分中の鉄分であります。一般的な水道水よりも1/10程度の鉄分含有量がお酒を仕込む上で適度であると言われています。専門的な話になるので化学方程式を出すのは遠慮いたしますが、そのまま仕込めば必要以上に色があったり、貯蔵中にあまり芳しくない香りが出てきたりしてしまいます。そこで英君では仕込み水を13mタンクの上から霧状にして降らせることにより、水分中の鉄分が酸化して酸化鉄となり、砂利層で取り除くというやり方をしています。

こうして仕込まれたお酒は口当たりが軟らかく、貯蔵させても変な香りが出ることのないお酒になります。お酒造りは水が命というお話でした。 次は横浜市都筑区にある(有)ライフ・アートの佐藤さんにバトンタッチします。